ヨハネの手紙Ⅰ 4:1-10  2022.6.5

 小田弘平

 紀元90年代の後半、イエス・キリストは神から生まれた御子であるという信仰に対して、これに反する偽預言者が大勢現れた。この勢力に信仰を奪われてはならない。そう考えたヨハネは「(神の子である)イエス・キリストが肉となって来られたことを公に言い表す」ことが必要だという。私たち信徒も私はキリスト者であると公に告白することが必要だ。キリスト信徒が少ないこの世において、公に言い表すには勇気が必要だが、いったん公に言い表すとイエス・キリストの霊が私たちを守ってくださる。

     ヨハネがこの手紙を書いた目的は何か。

信徒たちに健全な信仰生活を送らせることにある。それゆえヨハネは最も大切なことを「互いに愛せよ

 

 

」とのみ簡潔に信徒に伝えた。まだ文字を読むことができない信徒が多かった時代、会堂で読まれる信仰の手紙を聴いて信仰の基本を信徒は自分の胸に焼き付けた。試練の中、信仰の友との交わりによって信徒を守った。ヨハネは「愛する者たち、互いに愛し合いましょう」と繰り返す。ヨハネの説教を聞いている素朴な信徒が目に浮かぶ。これに比べると現代の信徒は聖書を眼で読み、論理的に理解して信仰に入る傾向があるように思う。しかし試練や困難のなかにいる時、イエスの短い一言、たとえば「疲れた者、重荷を負う者は,だれでもわたしのもとに来なさい。休ませてあげよう」(マタイによる福音書11章28節)という短い言葉によって救われる。論理で救われるのではない。