マタイによる福音書19章           2023.8.6

小田弘平

テーマ:「天に宝を積む」

   金持ちが永遠の命を与えられることは難しい。金持ちの青年がイエスの許に来て永遠の命を得るのはどうしたらよいかと尋ねた。彼には律法が命じていることはすべて行ってきたという自負があった。しかしイエスはあなたには「なお欠けたものがある」と言われるのである。自分の富をすべて売り払って「私に従いなさい」と言われた。真面目で誠実な働き者の彼が得た富を売り払えと言われることは、これまでの人生のすべてを失うことである。彼にはそれはできなかった。そしてイエスの許を去った。

 

    この話を私たちは読み過ごすことはできない。イエスの言葉通りにすべての財産を売り払って他人に施すことができない。それにもかかわらず、この言葉は私たちの魂にぐさりと刺すのである。信仰は信仰、現実は現実を使い分けて人生を送っている。信仰を食い物にしている。しかし、イエスは「あなたには欠けているものがある」と言われるのだ。

    イエスは言われる。「わたしの名のために、家、兄弟、姉妹、父、母、子供、畑を捨てた者は皆、その百倍もの報いを受け、永遠の命を受け継ぐ」と。永遠の命を受け継ぎたい。ではどうするか。

    実際に生涯を神のために送った人物がいた。彼はまったくの見返りを求めず、生涯をかけて荒れ地を森に変えようとした。ジャン・ジオノの『木を植えた人』に紹介されている。彼は人知れず誰にも顧みられずない地上を去ったようだ。彼の生き方は永遠の命に至る道を教える。そうだ、これからの生涯を見返りを求めない生き方をすることだ。見返りを求めない彼の生涯は今でも連鎖反応を起こしているという。