マルコによる福音書2章1節~17節   2021.8.1

小田弘平

 イエスが汚れた霊や病を癒やしたという噂はたちまち広まり、大勢の人は押し寄せた。

 そこに中風の人を癒やしてもらおうと4人の友が屋根を剥がし、中風の男を床に寝かしたままイエスの前に吊り降した。彼らにはイエスに癒やしてもらう機会は今しかないという切実さがあった。イエスはこの真剣さを見て癒やされた。

この物語は何をわたしたちに伝えようとしているか。この物語はイエスの伝記を語ろうとしているのではない。この物語を読む私たちに語りかけている。マルコによる福音書を書いた著者はこれを読む私たち読者に問いかけている。あなたはどう生きるか。何のために生きているか。

 イエスの福音は癒やしで終わるのではない。救い主イエスの祈りは「神の国と神の義を求めよ」という一点にある。それゆえイエスは中風の人に「子よ、あなたの罪は赦される」と直球を投げた。この福音書の著者は神の子イエスが、読者に「子よ、あなたの罪は赦される」と語りかけてい

 

 

 

る。この物語は現在進行形である。この宣言によって罪を赦され神の国に生きる道があることを私たちに告げる。この宣言は律法学者の前でなされたものであるが、わたしたちにも律法学者のような気持ちを持っていないだろうか。私にもイエスの言葉をそのまま受け容れる資格があるだろうかと考え、招きの場から去ることはないか。

 イエスは収税所の前で、収税所に座っている男の視線を体に感じた。自分もイエスの話される言葉を直接聴きたいと願う。イエスはこの祈りに応え、「わたしに従いなさい」と言われた。彼は即座に中風の人と同様に立ち上がり、イエスに従った。イエスに従うとは現在位置から即刻立ち上がることである。イエスは言われた。「医者を必要とするのは、丈夫な人ではなく病人である。わたしが来たのは、正しい人を招くためではなく、罪人を招くためである。」

  聖書の原点がここにある。罪人とは誰か。